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経営と人材育成
競争のないところに人は育たない
今から4年ほど前になるが、某一部上場会社の創業社長から次期社長後継者ついて相談を受けた。社長は一代で会社をここまで育て上げてきたたいへん有能な方で、当時はまだ58歳、トップとしてまだまだ活躍できる年齢であったが、将来社長になりうる社内の人材がまだ41歳であったために、自身から直接この本名候補に社長職を引き継ぐには年齢差が大きすぎるのではないかというのが相談の内容であった。
創業社長のアイディアは、中継ぎ社長として50歳前後の有能で実績豊富な人材を外部から登用し、ワンクッション入れることで41歳の本命によりスムースに経営を引き継げるのではないかというものであった。
その本命候補者は当時既に営業部門の要職についておられたので店舗視察に同行していただく等、何度かご一緒させていただいたが、たいへん真面目な努力家で、創業社長を心から尊敬していることが私にもひしひしと伝わってくる方であった。社長が厚い信頼を置いているのも極めて納得のいくところである。

しかし、私の直観的に感じた最善の案は社長のアイディアとは違っていた。
私の案では、外部から導入するのは次期社長候補ではなく、41歳の本命のライバルになりうるような実績ある営業系の逸材であった。そして一定期間営業部門でダブらせた後に、41歳の本命は管理部門の然るべきポジションに配置転換し広い視野を身に着けてもらい、外部からの人材には営業部門を率いてもらう。こうして両者が互いに競争し成長できる環境を用意する。

こうした提案をさせていただいた主な理由は以下の通りでした。
1. 創業社長はまだ相対的に若く(58歳)、本命が50歳前後になるまで(あと9年間)充分頑張れる
  年齢である。 従って、中継ぎ社長の必要性は低い。
2. 41歳の本命に対抗しうるライバルが社内には存在しない。素質があったとしても競争がないと
  人は育たない。
3. 本命の方について掘り下げた評価をしたわけではないが、誠実・真面目で創業社長にたいへん忠実な人
  物であることは間違いがないが、社長後継者としてはまだ開発途上の人物という印象であった。
 (尚、私個人的には、理想的な社長後継者の条件の一つはInside outsiderであること、即ち、組織の内部
 にありながらも、尚且つ、外部者のように会社とそれを取り巻く環境を客観的に見る力を備えており、将来
 会社が進むべき方向性を決める能力を有する人物ではないかと思っています。)

しかし、最終的に、このクライアントは次期後継者候補の採用も、またライバルの採用もしなかった。
そして4年が経過した今日、当時本命と目されていた候補者は本流をはずれ、営業部門の要職はさらに一回り若い社内の人材によって引き継がれることになった。41歳だった本命は、やはり期待通りには成長しなかったのである。
後を引き継いだ現在の本命の方とも何度かお会いしたが、たいへん誠実な努力家でバランスの取れた立派な人物であることは疑いないように感じられた。
しかし、彼にも、社内にこれといったライバルはいない。
教訓: 競争のないところに人は育たない。
干場 2009年6月
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